【海外展開を見据えて】日本とアメリカでのビジネスモデル特許の違い
2025.10.03
こんにちは、弁理士の植田です。
「うちのサービス、特許取れるかな?」
「アメリカ進出を考えているけど、日本と何が違うの?」
最近、フィンテック・SaaS・プラットフォーム型ビジネスなど、
いわゆる「仕組み」や「ビジネスモデル」で
差別化を図る企業が増えてきました。
そうなると気になるのが、“ビジネスモデル特許”は
どこまで守れるのかという問題です。
今回は、日本とアメリカでの「ビジネスモデル特許」
の考え方の違いを、実務目線でわかりやすく解説します。
■そもそもビジネスモデル特許とは?
まず大前提として、「ビジネスモデル特許」という言葉は、
法律上の正式名称ではありません。
正確には、「ビジネスの仕組みに関する技術的アイデア」が、
特許の対象となり得るという話です。
たとえば、
・決済の新しい仕組み
・ユーザーと事業者をマッチングさせる方法
・データを活用した業務改善のフロー
・AIを用いたスコアリング・予測モデル
・オンライン契約や手続きの自動化システム
これらは、単なる「商売のやり方」ではなく、
「技術的手段」が伴えば、特許の対象になります。
■日本では“技術性”が前提
日本の特許庁では、「ビジネスの仕組み」だけでは特許になりません。
ソフトウェアやデータ処理、システム構成など、
技術的な裏付けがあることが必須です。
たとえば、
・〇「決済手段Aと連携した認証方式により不正を検出する処理フロー」
・✕「○○のような売り方で利益が出るモデル」
というように、“技術としての説明ができるか”が鍵になります。
■アメリカでは一時“なんでもアリ”だったが…
アメリカではかつて、「ビジネスのアイデアでも、広く特許が取れる」
時代がありました。
特に2000年代前半には、Amazonのワンクリック特許のような、
単純な仕組みでも特許になっていた時代があります。
しかし、2014年の「アリス判決(Alice判決)」以降、潮目が変わります。
この判決により、
・単なるアイデアではダメ
・抽象的なアルゴリズムもNG
・「技術的課題の解決」に該当しないと特許は認められない
というように、実質的に「技術性」が求められるようになったのです。
つまり、現在のアメリカでも、日本と同様に
“技術的な工夫”がないと特許にならない傾向にあります。
■日本とアメリカの“見極めポイント”はココ
同じビジネスモデルでも、日本とアメリカで審査官の見方が異なることがあります。
以下のポイントを意識しておくと、出願戦略に役立ちます。
■ 日本:
・「システム構成」や「情報処理の流れ」を丁寧に説明することで、特許性が出やすい
・実装レベルに落とし込めることが前提
■ アメリカ:
・「社会的課題」や「既存の課題との違い」へのインパクトを重視
・判例に基づく主張構成(アリス判決以降)も必要
■海外展開するなら「出し方の順番」も戦略的に
アメリカで特許を取りたい場合、PCT(国際出願)を使って、
日本→アメリカの順で進めることも多いですが、場合によっては
アメリカを最初に出願する戦略も有効です。
なぜなら、アメリカでは「先に出した国の公開内容が審査の際に使われる」ケース
もあるため、アメリカ先願で、審査対策を練っておくと有利になる場面があるからです。
■ビジネスモデル特許で注意したい3つのポイント
1.「アイデアだけ」では守れない
→ 技術的な仕組みに落とし込めているかが重要です。
2.すでに使っていると公開リスクがある
→ 展開前に出願するのが基本です。
3.国ごとに審査基準が違う
→ アメリカ・欧州など、進出国の制度を理解しておくことが大切です。
●まとめ
ビジネスモデル特許は、「夢のある言葉」ですが、中身は非常に実務的かつ技術的です。
特に海外展開を見据える場合、日本とアメリカの制度の違いを理解しておくことで、
将来の権利トラブルやコストの無駄を防げます。
「うちのアイデア、どこまで守れる?」
「この仕組み、アメリカでも通る?」
そんなご相談も、ぜひお気軽にどうぞ。
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