【創業相談でよく聞かれる】「この名前、使って大丈夫？」への答え方
2025.11.22
こんにちは、弁理士の植田です。
創業支援の現場や、スタートアップの立ち上げ支援をしていると、非常によく聞かれるのがこの質問です。
「このサービス名（屋号）、もう考えてるんですけど…使っても大丈夫ですか？」
この問いには、シンプルなようで実は非常に奥が深い背景があります。
本記事では、創業支援者・士業・コンサルの方向けに、「この名前、使って大丈夫？」と聞かれたときの答え方の考え方と、気をつけるべきポイントを解説します。
1. まず最初に伝えたいこと：「“大丈夫”の意味を明確に」
この質問の裏には、いくつかの不安が混在しています。
・法的に問題ないか？（商標侵害リスク）
・ドメインやSNSで使えるか？
・覚えやすくて差別化できるか？
・他人に真似されないか？
つまり、単に「名前がいいかどうか」ではなく、“守れているか”と“奪っていないか”という二重の確認が必要なのです。
2. 回答ステップ①｜「商標調査はしましたか？」
まず一番重要なのは、「商標として、すでに登録されていないか？」の確認です。
これはJ-PlatPat（特許情報プラットフォーム）などの無料ツールである程度調べられます。
よくある落とし穴：
・業種が違えばOKと思っている
・登録されていなくても、先に使っている人がいたら危険
・英語表記・ひらがな・カタカナ違いで見落とす
商標調査の結果によって、「その名前、もう使われてるかもしれませんね」という注意喚起をすることが可能です。
3. 回答ステップ②｜「先に商標を取る意思はありますか？」
相談者がその名前を本気で使っていく気があるなら、使用前に出願するのが理想です。
理由はシンプルで、先願主義（早い者勝ち）だから。
「いま誰も取っていない」＝「あなたが取れるチャンスがある」
ということです。
「出願まではしないけど使いたい」という場合は、リスクを説明しながら、“すでに商標を持っている人に注意しましょう”と伝えることが大切です。
4. 回答ステップ③｜「誰の名前か曖昧にしないようにしましょう」
創業時によくあるのが、
・共同創業者が考えた名前を出願していない
・デザイナーが勝手にロゴを決めた
・名前だけでなくロゴも真似されていた
といった“名前の権利の所在が不明確”なケースです。
創業前後で揉める可能性を避けるためにも、
・誰が名付けたのか
・誰の名義で商標を取るのか
・ロゴやキャッチコピーも守る対象か
をきちんと確認し、可能であれば契約書などで整理しておくことが望ましいです。
5. 最後に｜「創業時こそ、名前を軽く見ない」
名前は、ビジネスの“顔”であり、“看板”です。
後から変えるのは、想像以上に大変。
・名刺・HP・SNS・パンフレット
・顧客の記憶・信頼
・ブランドイメージの積み上げ
すべてが「名前」を前提にできているからです。
◆まとめ｜相談されたときの答え方の型
１．商標登録の有無を確認
２．使いたいなら出願を検討
３．誰の名前か、管理体制を明確に
４．「大丈夫」の定義を説明し、判断は慎重に
創業相談の最前線にいる方々が、この問いに自信を持って答えられるよう、
知財の視点をぜひ“初期段階から”取り入れていただけたら嬉しいです。
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