【社員が作ったのに…】「その発明、会社のもの?」職務発明の基本と対応法
2025.10.01
こんにちは、弁理士の植田です。
今回は、中小企業の現場で“意外と多い”けれど、
見落とされがちな「職務発明」の問題についてお話しします。
こんなケース、思い当たりませんか?
■ ある日、社員がいいアイデアを出してきた。
「試作してみたら、これ、かなり使えるんです」
「製造ラインの無駄が減りました!」
「お客さんにも喜ばれていて、他社にも売れそうです」
素晴らしい!ウチの技術者、やるなぁ…!
—— でもちょっと待ってください。
この発明、誰のものでしょうか?
・社員本人?
・会社(社長)?
・それとも…「曖昧なまま」になっていませんか?
■「職務発明」って何?
職務発明とは、簡単にいうと、
社員が、仕事の中で生み出した発明のこと。
たとえば…
・設計担当が作業中に思いついた改良技術
・営業が顧客ニーズをヒントに考案した新サービスの仕組み
・製造現場での作業効率アップの仕掛け
これらはすべて「発明」に該当する可能性があります。
■ 原則は「発明者=社員のもの」
実は、法律(特許法)上は発明した本人に権利があるとされています。
つまり、放っておくと、社員が特許を取ってしまうことも可能なんです。
とはいえ、実務では「会社の名前」で出願したいですよね。
それを可能にするには?
対応策:「職務発明規程」を整えること
企業側が発明の権利を取得できるようにするには、以下が必要です。
1.就業規則や契約書で「発明は会社のもの」と定める
2.その代わり、社員には「相当の対価(報奨金)」を支払う
3.その仕組みを“合理的”に整備・運用していること
これらをまとめて「職務発明制度」と言います。
■ よくある中小企業の落とし穴
・「規定がない」=社員に権利が残ってしまう
・「出願だけ会社で進めた」=後でトラブルに
・「発明報奨のルールがない」=モチベーションが下がる
・「退職後に特許を主張された」=交渉泥沼化のリスク
特にベテラン社員のアイデアがそのまま商品化された場合、
あとになってから「これ、私が考えたんですけど…?」
という主張が出ることもあります。
■ 最低限やっておきたいこと(チェックリスト)
・就業規則に「発明は会社に帰属する」旨の記載があるか?
・発明報奨のルールがあるか?(金額や支払い時期)
・出願や特許取得後に、発明者に通知しているか?
・退職後の権利関係について明文化されているか?
■ よくある質問
Q.「ウチはまだ特許なんて考えてないんですが…」
→ 今は関係なくても、将来必ず関係します。
まずは「規定だけでも作る」ことが大切です。
Q.「報奨金ってどのくらい必要ですか?」
→ 金額は自由ですが、「合理的」と思われる水準であることが大切です。
たとえば、出願時:1万円、登録時:2万円 などの例があります。
Q.「1人会社(社長自身が発明)でも必要?」
→ 基本的には不要ですが、共同創業者や外部パートナーが関与しているなら要注意です。
■ まとめ:アイデアが出る会社こそ、早めの備えを。
中小企業は、「現場の工夫」が強みです。
でも、そのアイデアを曖昧なまま使っていると、リスクにもなります。
「誰のものなのか?」
「将来、何か言われないか?」
——そうならないためにも、小さいうちから備えることが“安心”と“信用”につながるのです。
📌 職務発明規程の雛形が欲しい方、
📌 顧問契約の範囲でサポート可能です。
知っているだけで、防げるトラブルはたくさんあります。
「うちは大丈夫」と思う前に、一度チェックしてみてくださいね。
ご希望あれば「報奨制度の設計」「退職時の注意点」など、
さらに掘り下げた記事も執筆可能です。お気軽にご依頼ください!
📝 ご相談・お問い合わせはこちらからどうぞ!
📌 YouTubeサブチャンネル開設!
「小さな会社のための知財戦略」をテーマに、わかりやすく解説しています
▶︎ チャンネルを見る
📌 ミライエ国際特許事務所の公式YouTubeチャンネル
事務所紹介や知財に関する最新情報を配信中
▶︎ 公式チャンネルはこちら
📌 ミライエの公式Instagramでも日々の活動を発信中!
▶︎ Instagramを見る