PCTだけじゃない!知っておきたい“地域別”国際商標出願の落とし穴
2025.10.05
こんにちは、弁理士の植田です。
海外展開を視野に入れたとき、「とりあえずPCT(特許協力条約)で
特許はまとめて出願しよう」と考える方は多いと思います。
ですが、商標には「PCT制度」はありません。
「えっ、特許と同じように国際出願できるんじゃないの?」
「マドプロって聞いたことあるけど、PCTとは違うの?」
――そんな疑問を持つ方のために、
“地域ごとの商標出願の注意点”をわかりやすく解説します。
■そもそも、PCTは“特許専用”
まず大前提として、PCT(Patent Cooperation Treaty)
は特許のための制度です。
商標には適用されません。
その代わりに、商標には「マドリッド協定議定書(通称:マドプロ)」
という国際出願制度があります。
つまり…
・特許 → PCT出願
・商標 → マドプロ出願
と使い分けが必要です。
「マドプロ出願」で安心?と思いきや…
マドプロは、一度の出願で複数国に出願できる便利な制度ですが、
万能ではありません。
特に注意したいのが以下のポイント
1. すべての国がマドプロ加盟国とは限らない
中国・アメリカ・欧州など主要国は加盟していますが、
たとえば東南アジアや中東、アフリカなどには未加盟国もあり、
個別に出願が必要なケースもあります。
2. 各国で審査される=拒絶されることもある
マドプロ出願をしても、指定した国ごとに独立して審査が行われます。
つまり、日本で通っていても、他国では「識別力が足りない」
「他人の商標に類似している」などで拒絶されることは普通にあります。
3. 国によって「商標審査のクセ」がある
たとえば
・中国:早い者勝ち。使っていなくても登録されるため、先取りのリスクが高い。
・アメリカ:「使用」が重要。使用していない商標は拒絶されることも。
・EUIPO(欧州連合):EU全域を一括でカバーできるが、1国で拒絶されると全体がアウトになることも。
このように、同じ「商標出願」でも国ごとにローカルルールが違うため、「マドプロだから安心」では済まされません。
■「広く出しておけばOK」は危険!
実務上ありがちなのが、「あとで使うかもしれないから、
ついでに○○国も指定しておこう」と無計画に国を増やすパターン。
ところがこれには落とし穴があります。
・不要な国に出してしまい、更新費用が毎年発生
・拒絶通知への対応や翻訳対応で、想定外のコストが膨らむ
・使用実績がないまま登録 → 不使用取消のリスク
つまり、「使う予定のある国」に絞って戦略的に出願することが大切なんです。
■実はある!“地域別”の制度や裏ワザ
地域によっては、地域全体をカバーできる制度もあります。
たとえば、
・欧州連合(EUIPO):1出願でEU全域をカバー可能
・アフリカ知的財産機関(OAPI)/アフリカ広域知的財産機関(ARIPO):複数国をまとめて出願
・ベネルクス商標庁(BOIP):ベルギー・オランダ・ルクセンブルクを1つで登録
こうした制度をうまく使えば、コストを抑えつつ、広く商標保護することも可能です。
■まとめ|「PCT感覚」で商標を出すと、痛い目を見ます
商標の国際出願は、PCTのような移行の段階で後から国を決定できる制とは少し違います。
・国や地域ごとに、出願戦略や注意点は異なる
・国ごとに独特の審査・拒絶の可能性あり
・本当に使う国だけに絞るのが、賢い商標戦略
海外展開を見据えるなら、ブランド名を守るための商標出願は“最初の防御”。
そしてそのためには、“出し方”を間違えないことが何より重要です。
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