【実録】職務発明規程がない会社で起きたトラブルと、その対応策
2025.10.09
こんにちは、弁理士の植田です。
「発明したのはうちの社員なんだから、会社のものだよね?」
…そう思っていませんか?
実はそれ、思わぬトラブルの火種になりかねません。
とくに、「職務発明規程」が整備されていない中小企業やベンチャー企業では、
発明の権利をめぐるトラブルが発生しやすくなります。
今回は、実際にあった事例をもとに、
企業側がとるべき対応策を解説します。
▶ 実例:元社員が発明を持ち出して起業したケース
ある製造系の中小企業では、長年勤めていた技術者が、
業務の中で新しい加工方法を考案し、
社内で試験運用を進めていました。
しかし会社側は、その発明を特許出願せず、記録も曖昧なまま放置。
一方その技術者は退職後、同様の方法を使って自ら起業し、
競合として市場に登場。なんとその発明を個人名義で
特許出願していたのです。
会社側は慌てて法的措置を検討しましたが、
「職務発明規程」がなく、明確な取り決めがされていなかったため、
誰に“発明の権利”があるのかの判断が難航しました。
結果、特許は元社員の手に。
しかも、会社は元社員の特許を回避するために、
技術の一部変更を余儀なくされました。
▶ なぜこんなことが起きたのか?
日本の特許法では、「職務発明」という考え方があります。
これは、社員が業務として行った発明に対して、
・発明の権利は一度、発明者(=社員)に帰属する
・ただし、会社側が「契約・規程など」で
事前に定めていれば、権利を会社に移せる
という仕組みです。
つまり、会社が権利を持つには、あらかじめ
“そのルール”を決めておく必要があるのです。
この「ルール」のことを「職務発明規程」と呼びます。
▶ 職務発明規程がないと、何が問題?
・社員が発明したとき、会社が自動的に権利を得られない
・発明を勝手に持ち出されても、法的に止めづらい
・後から特許の帰属で揉めると、社内の雰囲気も悪化
・M&Aや資金調達の場面で「知財リスクあり」と見なされる
つまり、会社にとって非常に大きな経営リスクになります。
▶ 今すぐできる3つの対応策
① 職務発明規程を整備する
会社と社員の間で「誰の発明か」を明確にするために、
まずは規程を文書化しましょう。
社内就業規則と連動させておくとベストです。
② 契約書に「知財の帰属」を明記する
とくに、正社員だけでなく業務委託・アルバイト・インターンなど
とも個別の契約で権利帰属を明確にしておくことが重要です。
③ 発明の記録・報告の仕組みを作る
「誰が」「いつ」「どんなアイデアを出したか」を記録しておくことで、
トラブル時に証拠として機能します。
社内報告書やノートでも構いませんが、
できれば日付入りで残しましょう。
▶ トラブルを未然に防ぐには?
実際にトラブルが起きてからでは、損失が大きくなります。
そのため、今すぐできる対策から始めておくことがカギです。
中小企業やスタートアップでは、発明をする社員が少人数でも、
その発明が将来の「柱」になることは十分にあり得ます。
だからこそ、ルールを作っておくことがリスク回避につながるのです。
■ まとめ
・職務発明とは、社員が業務で生んだ発明のこと
・規程がないと、会社が権利を主張しづらくなる
・トラブルを防ぐには、早めにルールを整備しよう
もし、「うちも職務発明規程って必要?」「どこまで整備すれば十分?」
といった疑問があれば、弁理士など知財の専門家に相談してみるのがおすすめです。
“備えあれば憂いなし”。未来の発明を守るために、今できる一歩を踏み出しましょう。
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